研究概要 |
1965年のLaurenの分類により、胃癌はintestinal typeとdiffuse typeに分けられて考えられるようになった。Laurenのintestinal type carcinomaは腺管形成傾向の明瞭な癌で、本邦では分化型腺癌に対応する。分化型腺癌は腸上皮化生から、未分化型癌は胃固有粘膜から発生するとされてきたが、粘液組織化学の発達により、通常の分化型癌のなかにも胃型の形質を発現するものが相当数ある事が証明され、このような癌が胃型分化型癌あるいは胃型腺癌と呼ばれるようになった。本研究では、分化型胃癌(特にこの胃型腺癌)に対して、comparative genome hybridization(CGH)及びarray CGHを用いて網羅的なゲノム解析を行う事を目的とした。まず、CGHの方法論に対する研究を行い、これまでのCGHの標識法であるnick translation標識よりもrandom priming標識の方が、FISHで直接求めたコピー数をよく反映していることがわかった(Tsubosa et al. in press)。そのため、今回の研究もrandom priming標識にてCGHを行った。完全な胃型の形質を示す早期の高分化型癌(胃型腺癌)で主に低異型度な症例を対象としてCGH法を用いて染色体異常を解析した結果、低異型度なものでも相当数の染色体異常が検出され、共通するものも多く存在することがわかった。また、その共通な染色体異常は、増幅では、17q24-qter,20qが、欠失としては、6qと18qが高頻度であり、amplificationとしては、15q26が検出された(九嶋ら、2003)。さらに、胃型の形質を持つ胃型(幽門腺型)腺腫〜胃型腺癌のsequenceを染色体異常の観点から初めて報告することができ、array CGHの結果から幽門腺腺腫の癌化には、p16及びHER2等が候補遺伝子として挙げられた。(九嶋ら、2003)。
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