本研究は、横紋筋特異的蛋白質Arppを新規筋系マーカーとして横紋筋肉腫診断へ応用することを日指している。昨年度までに行った免疫組織化学的解析により、軟部肉腫においてArppは横紋筋肉腫で高い陽性率を示し、その陽性率は既存の筋系マーカーと同程度か優れていることが示唆された。 本年度は筋系マーカーとしてのArpp特異性をさらに裏付けるため、種々の上皮性腫瘍でのArpp発現を解析した。乳癌5例、肝癌4例、肺癌10例、食道癌4例、胃癌5例、大腸癌5例、直腸癌5例の計38例の上皮性腫瘍を対象とし、免疫組織化学染色を行なった結果、Arppの陽性率は0%(0/38)と低く、軟部肉腫に加え上皮性腫瘍でも筋系マーカーとしてのArpp特異性の高さが示された。 また、免疫組織化学染色の所見を裏付けるため、超低温フリーザーに保管された横紋筋肉腫凍結材料3例から蛋白質を抽出し、抗Arppポリクローナル抗体を用いてウエスタンブロット法による解析を行った。その結果、症例により発現レベルは異なったが全例でArpp蛋白質に相当するバンドを検出し、本方法においてもArpp発現が確認された。 以上より、(1)Arppは横紋筋肉腫で特異的に陽性率が高く、軟部肉腫と上皮性腫瘍を含む他の腫瘍では陽性率が低い。(2)横紋筋肉腫におけるArpp発現はウエスタンブロット法にでも確認された。(3)横紋筋肉腫に対するArpp感度は既存の筋系マーカーと同程度か優れている。ことが示唆された。したがって、Arppは新規筋系マーカーとして横紋筋肉腫の診断に応用可能であると考えられた
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