研究概要 |
本研究では免疫グロブリン重鎖領域に重点をおき,B細胞性悪性リンパ腫と組織学的に確定された症例での,免疫グロブリン領域によるサザン法,PCR法による陽性率とその組み合わせ,主要組織型(濾胞性やび漫性大細胞型など)での陽性率,転座に関連したPCR法の有用性を検討する。 1.症例の選択 本学病理・病態学教室の悪性リンパ腫シリーズより,追加切片や抽出DNA利用可能な症例を選び,WHO分類による組織型,サザンブロット法による免疫グロブリン(JH領域)遺伝子検索結果を確認した。本年度はリンパ節病変についてPCR法を用いた検討を開始し,び漫性大細胞型B細胞性リンパ腫15例,濾胞性リンパ腫10例,及び対照として反応性リンパ節炎5例を中心に解析した。一般に利用されている免疫グロブリン重鎖領域のPCR法や,転座型遺伝子異常において代表的な(14;18)転座(bc12-IgH)について試行を行い,陽性率が高いと思われる条件を選択した。 2.PCRによる(14;18)転座の検討では,未固定材料抽出DNAを用いたlong PCR法により,濾胞性リンパ腫において高率に(14;18)転座が証明可能で,MBRとEμに対して設定されたプライマーペアによる陽性率が高かった。パラフィン材料でのPCRとの不一致例について検討中である。 3.免疫グロブリン遺伝子領域のPCR法によるmonoclonalityの検討について,重鎖のFr2a-LJH,Fr2a-VLJHによる2ステップPCRが比較的安定していた。これで陰性となった症例について,他のプライマーペアによるmonoclonality証明の可否について,またこの内サザンブロット陽性例については,その制限酵素処理後のDNAを用い,inverse PCR法によるIgH領域の増幅が可能か検討中である。
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