胃癌におけるDNAメチル化およびヒストンアセチル化標的因子について解析した。胃癌組織の50%、および、胃癌細胞株KATO IIIで、Helicase-like transcription factor (HLTF)遺伝子のメチル化が認められた。胃癌細胞株7株では、KATO-IIIのみでHLTF mRNAの発現消失が認められ、HLTF mRNAの発現消失には、メチル化が関与することが明らかとなった。さらに、胃癌細胞株KATO IIIでは、HLTF遺伝子は低アセチル化状態であった。これらのことより、胃癌の発生にはHLTF遺伝子のメチル化および脱アセチル化が関与していることが示唆された。 また、胃癌の浸潤・転移に関与する遺伝子について解析を行った。Integrin-linked kinase (ILK)は、胃癌組織122例中118例(97%)、胃癌培養株5株中4株(80%)にILKの発現が認められた。その発現程度は癌の間質量・深達度・リンパ節転移の有無と有意に相関しており、増殖・浸潤に重要な役割を演じていることが示唆された。Osteoprotegerin (OPG)の発現は、胃癌細胞株8株中1株のみに認められたが、胃癌組織では65%(67/103)で陽性であり、その発現は、深達度・リンパ節転移・ステージと相関していた。これらから、OPGの発現は胃癌の発生・進展に関与し、その発現は浸潤・転移や予後と相関することが示唆された。
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