1)CD151分子のヒト癌組織内局在と機能およびシグナル伝達機構の解析 種々の癌組織でのMMP遺伝子群の発現を解析した。解析の結果、MT1-MMP/MMP-2およびMMP-7の活性化型酵素の発現が、癌組織での遠隔転移および生命予後に相関することを明らかにした。さらに詳細な検討を進めるために、MMP-7を高発現する子宮内膜癌組織を用いて、MMP-7および先に活性化促進因子として同定したCD151の組織内発現および酵素活性検出を、免疫組織化学とin situ zymographyで解析した。正常および高分化型腺癌では、CD151は管腔構造の基底膜側に局在し、潜在型MMF-7は、内腔側に局在していた。しかし、低分化型腺癌では癌細胞の全周性にCD151が発現され、潜在型MMP-7の活性化は浸潤先端部で強く認められた。 2)潜在型MMP-7活性化分子のスクリーニングおよびMMP-7の新規機能 ヒト肺癌組織のcDNAライブラリーをCOS7細胞に導入し、潜在型MMF-7を活性化する遺伝子導入細胞のスクリーニングを開始した(発現クローニング法)。現在10%程度の候補をスクリーニングし、10数個の候補遺伝子をクローニングしている。これらの候補遺伝子については、現在詳細な機能解析を行っている。また引き続きスクリーニングを行っている。 これとは逆に、MMP-7が活性化する因子として、ADAM28を見いだした。ADAM28は潜在型で産生されるものの、その活性化機構は不明であった。MMP-7はADAM28のプロペプチドを切断することにより活性型に変換し、さらに活性化型のADAM28がIGFBP-3を分解することを明らかにした。このことは、MMP-7が単に細胞外基質の分解にとどまらず、ADAM28を介して増殖因子の機能調節にも関わっていることを示した。
|