(1)対象材料の収集と選別:培養結核菌および非結核性抗酸菌パネル、肺被包乾酪巣、滲出性肺結結核症のホルマリン固定パラフィン切片を選択し、抗酸菌染色にて抗酸菌の有無を確認した。 (2)酵素抗体法:市販抗体(抗BCGポリクローナル抗体、抗結核菌モノクローナル抗体)を使用し、各種増感法にて陽性菌の有無を確認した。 (3)in situ hybridization(ISH)法:抗酸菌の検出に着手する前に、まず抗酸菌以外の一般細菌を対象として技術的な検討を行った。すでに一般細菌を対象とした二本鎖cDNAプローブの検討により、プローブサイズがプローブの浸透性に大きく影響することを確認していたため、サイズの小さなオリゴヌクレオチドプローブを選択した。文献的に特異性が確認されている塩基配列を採用し、16Sあるいは23SのrDNAまたはrRNAを対象とした合成オリゴプローブを作製した。加熱処理または蛋白分解酵素処理を行い、CSA法(超高感度増感)を用いて、ブドウ球菌や腸球菌、連鎖球菌、大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌など9種類の細菌およびメチシリン耐性遺伝子mec Aの検出条件を確立した。続いて、汎抗酸菌と結核菌の16S rDNAおよびrRNAを対象とする合成オリゴプローブを合成し、これまでに得たノウハウをもとに抗酸菌を対象としたISH法を試みたが、上記収集材料に対する陽性シグナルは得られなかった。 (4)総括:ISH法による抗酸菌検出が予想以上に難航したため、当初の目的であるVNC(Viable but non-culturable)型結核菌の検出、結核症の再燃機序の解明には至らなかった。一方、ISH法の技術的な検討過程で、抗酸菌以外の一般細菌の検出系を確立できた点は一定の成果として挙げられる。病理診断の立場からメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)などの細菌感染症を解析する研究を展開中である。
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