1.アミロイド線維AApoAIIの形成機構ならびに伝播経路の検討:マウス老化アミロイドーシスの原因アミロイド線維AApoAIIの形成には構成タンパク質apoA-IIの2つの異なる領域(N末領域とC末近辺領域)が必要であることを明らかにし、線維形成に重要なアミノ酸配列を同定した。この2領域の合成ペプチドによるアミロイド線維形成にはアミロイド線維核(seed)を必要とせず、中性よりは酸性条件下で速やかに反応し、反応生成物が生体本来のものと同一構造であることを確認した。さらに、反応生成物をマウスに静脈内投与することにより、弱いながらも老化アミロイドーシス発症促進効果を有することが期待できる結果を得た。しかしながら、他の投与経路、沈着開始臓器の相違等の詳細解析には至っておらず、現在、例数を増やして研究継続中である。また、老化アミロイドーシス高発症型マウスが有するapoA-IIと低発症型マウスのapoA-IIの構成アミノ酸の違いに着目し、アミロイド線維形成・伸長反応とアミロイドーシス発症促進効果を検討したところ、アミロイド線維形成に重要な領域内のアミノ酸の違いは線維形成・伸長反応に何ら影響せず、また、例数は十分ではないものの、アミロイドーシス発症促進効果にも違いがないと予想できる結果を得た。現在、さらに詳細検討中であるが、マウス老化アミロイドーシスの発症は、原因アミロイド線維とその他の何らかの因子とが相互に作用している可能性が考えられる。 2.蛋白質伝播仮説の普遍性に関する検討:これまでの研究により、老化アミロイドーシス高発症型マウスに他のアミロイドーシスの原因アミロイド線維を投与しても老化アミロイドーシスが早期に発症したことから、蛋白質伝播が普遍的であると推察されているが、研究代表者の所属教室で開発したヒト透析アミロイドーシスモデルマウスにも同一の結果が得られるか、現在、経過観察・詳細解析中で、蛋白質伝播の普遍性を今後も実証していく。
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