研究概要 |
自己免疫性の慢性関節炎を自然発症するIL-1レセプターアンタゴニスト(Ra)ノックアウト(KO)マウスと最も重要なT細胞補助シグナルの一つであるCD28のKOマウスとをかけあわせ、ダブルKO(dKO)マウスを作製した。IL-1raKO、dKOの関節炎の発症率には大きな差がないが、重症度はdKOの方が有意に抑制されることが明らかになった。このときの血中抗体価を測定したところ、IgM抗体価についてはraKOとdKOで差が見られなかったが、IgG抗体価はdKOでは野生型マウスと同程度まで低く抑えられていた。また、自己抗体であるanti-dsDNA抗体価もdKOでは正常レベルまで減少していた。このことから、B細胞のクラススイッチおよびIgG型の自己抗体の産生にはCD28シグナルが必須であることが明らかになった。 他の補助シグナルの関与を調べる目的で、CD3刺激後のT細胞表面上のOX40,CD40Lの発現を調べたところ、OX40の発現はdKOで非常に低いレベルに抑えられており、その発現はCD28シグナルに依存していることが明らかになったが、CD40Lの発現はどのマウスでもほとんど変化がなく、CD28非依存的に発現しうることが明かとなり、関節炎発症への関与が考えられた。 この関節炎の発症におけるT細胞の役割についてより詳細に検討する目的で、IL-1raKO、dKOそれぞれのT細胞を、T細胞欠損マウスであるnudeマウスに移入した結果、IL-1raKOのT細胞を移入したnudeマウス(raKO→nude)は関節炎を発症したが、dKO→nudeでは全く関節炎を発症しなかった。以上のことから、CD28補助シグナルはIL-1raKOマウスが発症する関節炎の発症に必須ではないが、自己反応性T細胞の活性化には重要な役割を果たしていることが示唆された。
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