研究課題
膵がんの転移に関わるタンパク質を同定する目的で、動物を用いた実験で転移能に差異があると分かっている膵がん細胞株および正常膵管上皮由来細胞株を使ったプロテオーム解析を行なっている。プロテオーム解析の手法としては蛍光二次元電気泳動法(2D-DIGE法)を用いている。細胞株のタンパク質発現プロファイルを統計的手法、データマイニングの手法で解析したところ、正常膵管上皮由来細胞、低転移性膵がん細胞、高転移性膵がん細胞の間で明らかに発現差のあるタンパク質が存在することが分かった。質量分析を用いてタンパク質を同定し、膵がん組織(手術検体)にてその発現を調べたのだが、正常膵管上皮細胞とがん細胞の間で染色性に差を認めなかった。二次元電気泳動ではタンパク質のアイソフォームを個別に観察しているのに対し、免疫染色ではすべてのアイソフォームを同じものとして検出してしまうからだと考えられる。培養細胞から得られた知見を臨床検体で確認するために、レーザーマイクロダイセクション法で腫瘍組織内の膵がん細胞だけを回収し、回収されたがん細胞からタンパク質を抽出して蛍光二次元電気泳動法にかける実験を行なっている。このようにするとタンパク質スポットは抗体を介さずに一つずつ比較することが可能である。タンパク質スポットの濃度を数値化したデータの主成分分析を行なうと、培養細胞と臨床検体ではプロテオームのパターンが全体としては大きく異なることが分かった。培養環境または生体内特有のタンパク質を除去あるいは補正することで両者のデータを統合することを検討している。また、培養細胞どうしの比較で同定されたタンパク質に対する抗体を用いて、血漿タンパク質のWestern blottingも試みてみた。目的とするタンパク質に関しては結果は陰性だったが、同時に既知のがん関連タンパク質に対する抗体でもWestern blottingを行なったところ、膵がん患者血漿にのみ反応が認められるタンパク質が存在することが分かった。血漿中のがん関連タンパク質の分子量は報告のものと大きく異なることから、現在そのようなタンパク質の構造解析を質量分析を用いて行なっている。
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Proteomics 5
ページ: 1411-1422
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