研究概要 |
平成17年度は次のような研究を行った。 1)膵がんの転移に重要な働きを示すマトリックス・メタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase、以下MMP)の基質となっているタンパク質を蛍光二次元電気泳動で探索する。2)市販されている特異抗体を用いて膵がん患者の血清タンパク質を調べる。1)においては、膵がん細胞の転移能や膵がん患者の予後と発現が相関することが報告されているMMP-2,MP-7,MMP-9と細胞から抽出したタンパク質を反応させ、反応前後のタンパク質スポットの変化を蛍光二次元電気泳動法で調べた。MMPによって切断されたタンパク質はスポット濃度が減少するし、濃度が増加するスポットは切断の結果として生じるタンパク質のフラグメントであると判断できる。濃度が変化したスポットをいくつか同定し、スポットに対応するタンパク質は質量分析で決定した。同定されたタンパク質の中にはMMPと発現レベルが相関することが知られているタンパク質、膵がん以外の悪性腫瘍で悪性度に関わることが報告されているタンパク質が含まれていたが、いずれもMMPの基質となることは知られていなかった。特にがんとの関わりが報告されているタンパク質に関して実験結果をWestern blottingで確認している。今後、切断によって生じるタンパク質の機能や腫瘍組織中での発現レベルなどを調べる計画である。2)については、市販されている特異抗体(合計232種類)を使い、Western blottingで膵がん患者9名、健常者9名の血漿を調べた。18種類の抗体が血漿タンパク質と反応し、うち5種類の抗体が膵がん患者血漿で異常な反応性を示していた。5種類の抗体に対応するタンパク質の中には、がん関連タンパク質として白血病患者の予後と発現が強く相関することが報告されているタンパク質が短くなったものが含まれていた。
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