昨年度に引き続き、本年度もトキソプラズマ・組換えピルビン酸キナーゼの結晶化を実施した。トキソプラズマ酵素に特異的な長いN末配列が、結晶化を阻害している可能性が指摘されていたため、本年度は、N末の10/33/50アミノ酸を切断した組換えピルビン酸キナーゼを作製し、結晶化およびX線構造解析を行った。それぞれの長さにN末を切断した活性のある組換え蛋白を作製し、最適の結晶化条件を探索した結果、10mM Tris-HClと40%ポリエチレングリコール3350の存在下で、六角柱状の微細な結晶を得ることができた。さらに、ピルビン酸キナーゼの結合基質である塩化カリウムおびATPの共存下、およびシステイン、イソプロパノールの共存下でその結晶がさらに成長することを見い出した。結晶化に最適なpHは6.0と7.2と二相性の性質を示し、ともに結晶の性状には差異を見い出さなかった。以上のように、現在までに、種々の条件でいくつかの有望な結晶を獲得することができたが、なお解析に十分な結晶はいまだ得られていない。今後はseeding法等を駆使し、X線構造解析に適したさらなる結晶の作製をすすめている。また、各ドメインごとに分けて組換えピルビン酸キナーゼを作製し、既存の結晶データベースを利用し、酵素の立体構造の解析も開始した。 一方、ピルビン酸キナーゼの薬剤標的としての評価を行うためのRNAi法による遺伝子発現抑制実験実施のため、ペンシルバニア大学生物学部D.Roos研究室と共同研究を開始し、トキソプラズマ原虫への遺伝子導入およびその評価方法について検討および予備実験を開始している。
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