Bacteroides fragilisの病原遺伝子として考えられているnanH遺伝子を含む複合糖鎖分解酵素遺伝子群の機能解析を通してB.fragilisにおける新たな病原性発現機構の解明を図るために、本年度は本菌種における有効な遺伝子操作システムの確立を試みた。 1.全ゲノム配列が明らかとなっているB.fragilis NCTC9343株およびYCH46株の制限・修飾システムを比較したところ、両菌株ともに14種類の制限・修飾システムを保有していた。しかしながら両菌株に共通の制限・修飾遺伝子は僅か4遺伝子しか認められなかった。したがって、B.fragilisは菌株毎に特有の制限・修飾システムを有しており、これが形質転換の障壁になっていると考えられた。 2.DNA受容菌となるB.fragilis NCTC9343株およびYCH46株の無細胞抽出液を用いてE.coli HB101株より分離精製したBacteroides-E.coliシャトルベクターpVAL-1をそれぞれメチル化することによって両菌株の形質転換効率が改善された。 3.染色体上の標的遺伝子との相同組換えを介した遺伝子破壊株を作製するためにpBluescript II KS(+)にBacteroides-E.coliシャトルベクターpE5-2より切り出した3.8-kbのDNA断片(選択マーカーエリスロマイシン耐性遺伝子を含む)を挿入することで自殺ベクターpKK100を構築した。 4.標的mRNAのアンチセンスRNAに与る遺伝子のknockdown mutant株を作製するために、シャトルベクターpVAL-1にBacteroidesで駆動する66-bpのcepA-IS1224の高発現用ハイブリッドプロモーター、各種制限部位およびompM terminatorを挿入し、発現ベクターpNH100を構築した。
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