本研究では、偏性寄生性細菌であるオリエンチア・ツツガムシ(以下、オリエンチア)の遺伝子発現が、昆虫細胞内とホ乳類細胞内においてどのように変化するかをリアルタイムRT-PCRを用いて明らかにすることを目標としている。オリエンチアのゲノム情報をもとに「他のリケッチア属細菌と共通の遺伝子群」と「オリエンチア固有の遺伝子群」に全遺伝子を分類し、各オペロンや生体プロセス毎に1〜2種類の遺伝子を発現解析の対象として選択する予定である。このため、申請者が中心となって進めているオリエンチアゲノムの配列決定・解析の終了が本研究の前提として必須となる。オリエンチアゲノムには重複配列が極めて多く単純なショットガンシークエンシング法では対処できないため、配列決定に多くの時間を費やしたが、平成15年の10月までに配列決定を終了した。現在、ゲノム解析を進めており、全遺伝子の同定と分類については既に終了している。解析から、オリエンチアに固有な遺伝子の大部分が接合伝達や遺伝子組み換えに関わる遺伝子で占められ、クラスターを形成してゲノム上に重複している様子が明らかになった。これらの遺伝子や特徴的なゲノム構造が、オリエンチアのヒトに対する病原性やツツガムシ(ダニ)との共生関係成立に深く関与している可能性が示唆されるため、発現解析の対象として特に注目している。 現在、上記の接合伝達・遺伝子組み換え関連遺伝子群、病原性に関係する可能性のある4型分泌装置に関わる遺伝子群、ハウスキーピング遺伝子群等の中から24遺伝子を解析対象の第一段として選択し、taqManプローブのデザインを行つている。ゲノム解析の結果がまとまり次第、本菌の培養条件およびリアルタイム定量RT-PCRによる遺伝子発現定量系を確立し、これら遺伝子から順次、発現解析を行っていく予定である。
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