研究概要 |
Candida albicans培養上清より分離したCAWS(Candida albicans water soluble fraction)は,マウスに対して強い致死毒性を持ち,更に血管炎誘発作用も有していた.この血管炎誘発作用はマウスの系統によって大きく感受性が異なり,大動脈起始部に100%血管炎を発症し,血管に著しい炎症像,すなわち多数の白血球の浸潤を伴う血管炎を起こす系統(DBA/2等),低発症率であり,発症しても炎症の度合いは軽度である系統(CBA/j等)などに分類された.そこで,CAWSを4種の系統のマウス(DBA/2,C57BL/6,C3H/HeN,CBA/j)に投与し,比較検討を行った. DBA/2,C57BL/6,C3H/HeNにおいては100%血管炎を発症し,その重症度はDBA/2が最も高く,次いでC57BL/6,C3H/HeNであり,CBA/jは軽度な血管炎がわずかに見られるのみであった.さらに,DBA/2においては血管炎誘発プロトコール中に致死にいたるマウスも存在し,心臓の組織染色を行ったところ,心筋の繊維化が観察された. また,CAWSを投与したマウスの脾臓細胞をin vitroでCAWSを添加して培養し,2次応答を観察した.培養上清中のサイトカイン濃度を測定したところ,DBA/2ではIL-6,IFN-γ,TNF-αが高値を示し,C57BL/6ではIL-6,IFN-γが,CBA/jでは,IL-10が亢進していた.CBA/jは未処置のマウスの脾臓細胞においてもCAWS刺激によりIL-10産生が観察された.IL-10は免疫抑制的に働くサイトカインであることから,CBA/jの血管炎ができにくい性状と何らかの関連があることも考えられた. 今後,CAWSによる血管炎誘発メカニズムを更に詳細に解析することで,モデルマウスとしての有用性が高まるものと考えられる.
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