研究概要 |
ハンセン病における神経障害機構を解明すること目的とし、カニクイザルの新生児および成体サルの後根神経節および坐骨神経由来シュワン細胞を株化した。らい菌感染またはその特異的抗原が及ぼす影響を検討するため以下の実験を展開した。 1.樹状細胞は、らい菌抗原をプロセッシングしたのち細胞表面に抗原を提示し、T細胞を刺激することを報告した。そこで、らい菌をサル由来末梢神経シュワン細胞に感染させ、抗原提示能を調べた。らい菌感染後、抗原提示に関わる分子(MHC Class I,II,CD80,CD86)の発現をフローサイトメトリーで検出した結果、シュワン細胞の表面にClass I、CD86の発現が増強していた。このシュワン細胞を用いてT細胞と混合培養するとIFNγの産生量が若干上がることから、シュワン細胞はT細胞を活性化することが示唆された。 2.らい菌のリボ蛋白の末梢神経シュワン細胞に対するアポトーシス活性について検討した。リボ蛋白刺激後、シュワン細胞の核染色による形態変化、FITC-Annexinを用いた細胞膜の反転について検討したが、顕著な変化は見られなかったことから、リボ蛋白は、シュワン細胞のアポトーシス誘導に関与していないことが示唆された。 3.FITC標識らい菌をシュワン細胞に感染させたのち、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。Molecular Probe社のリソゾームマカーLysotracker Redを用いてらい菌のtraffickingをサルのシュワン細胞で観察した結果、らい菌はリソゾームと同時に存在する所と単独に存在する所もあった。 サル由来のシュワン細胞はらい菌に易感染性であり、T細胞を活性化した。このことはハンセン病における末梢神経障害の発生機構を解析する上で有用な知見を提供しうる考えられる。
|