研究課題
らい菌は、マクロファージおよび末梢神経シュワン細胞に対し親和性を示す細胞内寄生菌であり、末梢神経障害など特有な臨床症状をもたらす。そこで、ハンセン病における神経障害機構を解明するため、カニクイザルの新生児及び生体サルの後根神経節および座骨神経からシュワン細胞の分離培養を試み、細胞株の樹立に成功した。得られたシュワン細胞はS-100およびラミニン抗原陽性でありシュワン細胞であることが確認された。本シュワン細胞を使用し、以下の成果を得た。1.らい菌またはその菌体成分を用いて、サルのシュワン細胞を刺激すると、炎症性サイトカインIL-8が細胞上清中に産生された。菌体分画の中でも、膜蛋白がより多くサイトカインを産生し、濃度依存的にIL-8を産生した。2.CD40L存在下ではシュワン細胞から産生されるIL-8が増加した。さらに数種類のサイトカイン化でIL-8産生能に対する影響を調べたところ、IL-1αのみが、シュワン細胞のIL-8誘導能を有していた。これらのことから、IL-8及びIL-1αはらい菌感染後に神経障害に関与していると考えられた。3.増殖因子heregulin存在化で2-3週間培養後、シュワン細胞の株化を図ったが、シュワン細胞はpassageを25-30回以上するとサイトカイン産生誘導能が欠落した。従って、シュワン細胞は、in vitroでは初期の段階でのみらい菌感染をうけるとらい菌由来抗原を発現し、サイトカインを産生することが明らかとなった。以上のことから、ハンセン病における末梢神経障害の発生機構を解析する上で新たな知見を提供しうると想定された。
すべて 2006 2005
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