プロモーター逆位反応に関わる諸因子の同定 Mycoplasma penetransゲノムにはP35膜リポタンパク質ファミリーの遺伝子が38個存在している。これらの発現パターンが変化することによりM.penetransの表面抗原性が変わり、宿主の免疫を回避するのに役立っていると考えられている。我々はゲノム配列情報から、これらの遺伝子のプロモーターが個別に逆位を起こしうる構造になっていることを示した。しかし、これら全てのプロモーターが逆位を起こしているかは確認できていなかった。今回PCRを使用してp35ファミリー遺伝子のプロモーター逆位が検出可能な系を確立した。検討の結果、多くのプロモーターで逆位が実際に起こっていることが確かめられた。また、このプロモーターの逆位を起こす酵素の検索を行ったところ、M.penetransゲノムにはλ-integrase familyのXerC/D組換え酵素にホモロジーのあるORFが2つ存在していた。これらの二つのORF(MYPE2900とMYPE8180)が実際にM.penetrans膜リポタンパク質のプロモーター領域のinversionに関与しているかを検証した。M.penetransでは遺伝子導入法が確立していないため、酵素と逆位可能なプロモーター領域の組み合わせをM.pneumoniaeに導入して実験を行った。その結果、MYPE2900をプロモーター領域と組み合わせたときに、プロモーター配列の逆位が確認された。一方、MYPE8180をプロモーター領域と組み合わせたときには、逆位は起こらなかった。このことからMYPE2900の産物がP35ファミリー膜リポタンパク質遺伝子の逆位に関与する組換え酵素であると考えられた。我々はこの酵素をMipR (Recombinase for Multiple Invertible Promoter)と名付けた。
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