サルモネラ エンテリティディスは主要な食中毒細菌である。一般的に細菌感染症の治療に使用される抗菌薬にセフェム系抗菌薬がある。本抗菌薬に耐性を示すサルモネラは、近年欧米で報告があるものの、依然として稀なものである。2003年7月に発生したサルモネラ エンテリティディス散発感染事例において分離された株はセフェム系抗菌薬の一つであるセフォタキシムに耐性を示すことを明らかにした。さらに本菌株を詳細に解析した。本株はセフォタキシムをはじめとしたセフェム系抗菌薬に対し、256μg/ml以上の最小発育濃度(MIC)を示した。一方で本耐性はクラブラン酸という阻害剤によって阻害された。またセファマイシン系の抗菌薬に対しては感受性を示した。こうしたことから、本菌株は基質拡張性β-ラクタマーゼを産生することが示唆された。実際、PCR等を用いて耐性遺伝子のクローニングに成功し、耐性遺伝子の本体がbla_<CTX-M-14>であることを明らかにした。さらに、本遺伝子が転移可能なプラスミド上に存在することを示した。また、ファージ型別によって本菌株がファージ型6aであることを同定したが、上記耐性プラスミドを欠くとファージ型が1になることなどから、ファージ型1の感受性株が本耐性プラスミドを獲得することによって生じたものであることが示唆された。 こうしたことから、耐性菌に対する警戒をより強める必要性が考えられた。
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