劇症型溶レン菌感染症起因株であるNIH1株に存在するphospholipase A2と相同性のある蛋白質をコードするsla遺伝子の突然変異体を作製するため、pVA838にsla遺伝子の内部領域をクローニングした。作製したプラスミドをエレクトロポレーション法によりNIH1に導入し、相同組換えにより、sla破壊株であるNIH1 sla::erm株を作製した。NIH1 sla::erm株をマウスの腹腔内に1x10^6チャレンジし、LD_<50>を調べたが、NIH1と差が確認されなかった。差が見られなかったのは、マウスに対して、感受性が低いことが考えられるため、マウスではなく、培養細胞を用いて、以後、実験を行うことにした。Slaが、直接、細胞毒性を示すか否か調べるため、Sla蛋白質を精製した。Sla蛋白質のアミノ酸配列を調べると、Slaは分泌蛋白質であることが推測されたことから、シグナルペプチドを除いたSlaをコードする領域をPCRにより増幅した。増幅した断片を大量発現ベクターであるpGEX6P-1にクローニングし、発現した時にglutathion-S-transferase (GST)との融合蛋白質ができるように作製した。大量発現させたGST-Sla融合蛋白質をPreScission Proteaseにより切断し、Slaの部分のみからなるリコンビナントSla (rSla)を精製した。rSla蛋白質がphospholipase A2活性を保有するか調べるため、TCL法により確認した。マウスの筋肉細胞であるC2C12細胞を用い、rSlaの細胞障害活性をLactate dehydrogenase (LDH)活性を指標に調べた。その結果、rSla蛋白質の添加量に依存してLDHの活性が上昇することから、この蛋白質には、細胞障害活性を保有することが示唆された。
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