インフルエンザウイルスゲノムからのRNA合成を促進する宿主因子画分RAF(RNA Polymerase Activating Factor)-2には、ウイルス核タンパク質NP(Nucleocapsid Protein)に対し酸性分子シャペロンとして機能するp48と、RNA認識・結合に関わると予想されるp36が存在する。昨年度の成果より組換え体p48を単独で発現・精製すると多量体化する事が判明したが、RAF-2画分においてp48は多量体化しておらずp36とのヘテロ2量体として存在する。 実際、p36上の特定領域にp48が結合する事を証明し、欠損変異体を用いた試験管内および細胞内での解析によって20アミノ酸程度の領域まで結合部位を狭めることに成功した。また、p48はアミノ酸配列上RNA巻き戻し酵素として機能すると推定されているが、どのような標的2本鎖RNAをもちいてもp48単独では有意な巻き戻し滑性を見出すことができなかった。p36の特性を考え合わせ、p48が本来の活性を示すためにはp36のようなRNA結合補助因子を必要とする可能性が考えられる。p36がモデルウイルスゲノムの特定領域に対して優先的に結合する事が明らかと成ったことから、感染細胞内においてウイルスゲノムRNA認識に関与する可能性が示唆された。また、p36がNPとも相互作用しうることが判明し、この相互作用にp36のカルボキシル末端ドメインが関与する事が判明した。このドメインはp48結合部位とは異なることから、p48・p36・NP・ウイルスRNAの4者複合体と成り得ることが判明した。さらに、p36は試験管内においてNP-モデルウイルスRNA複合体形成を促進する活性を持つことが見出された。これらの成果より、p36はp48-NP複合体をウイルスRNA上へと導く役割を担っていると考えられる。
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