研究概要 |
単純ヘルペスウイルス(HSV)は基礎研究の分野で古くから勢力的に解析が行われ、また近年では遺伝子治療ベクターとして臨床研究の分野でも注目を集めている。いずれにおいても第1段階として組換えウイルスの作製が必須である。しかし、従来の組換えウイルス作製技術は煩雑でありかつ、かなりの長期間を要した。 本研究の目的は1.HSV研究の壁になっている組換えウイルス作製法の技術改変法の確立。2.1で確立した手法に基づき、未だ明らかにされていない、または機能の解明されていない遺伝子を解析しその生物学的機能を明らかにする。3.最終目標としては1,2,を元に安全で治療効果の高い有用なHSV遺伝子治療ベクターを開発することにある。 本研究では昨年度までにRecA法、RecET法を駆使した、あらゆる変異導入が可能な大腸菌内での組み換えウイルス遺伝子作製法を確立し、この系を用いて全てのヘルペスウイルスで保存されているプロテインキナーゼであるUL13をターゲットとして組換えHSV作製を試みてきた。 本研究の今年度の成果は、 UL13に1アミノ産地間を導入することで、そのキナーゼ活性のみを消失した変異ウイルスの作製に成功し、その性状解析を行った。その結果、現在までに報告されてきた、UL13欠損ウイルスを用いた実験結果はUL13のキナーゼ活性には影響されないことが判明し、UL13が多機能ウイルス制御因子である可能性が強く示唆された。現在さらなる解析を進めるとともに、新たなウイルス因子をターゲットとして様々な組換えHSVを構築中である。
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