Toll-like receptor (TLR)はヒトで10個、マウスで12個存在し、各TLRが異なる病原体を認識することが明らかとなっている。これらのTLRに特異的な病原体成分を用いて樹状細胞を刺激すると樹状細胞は成熟分化し、Th1細胞分化支持能を有する抗原提示細胞になる。本研究では、アダプター分子MyD88を欠損する樹状細胞をモデル実験系として用い、MyD88欠損樹状細胞がTLR4のシグナルにより活性化・成熟分化する際に発現し、Th2細胞分化を誘導する分子を同定することを目的としている。 MyD88遺伝子欠損マウスの骨髄細胞をGM-CSF存在下で培養して得られる骨髄由来未熟樹状細胞を用い、TLR4のリガンドとしてLPSを用いて刺激を行い、Th2細胞分化支持能を有する樹状細胞が作製した。この細胞を抗原として免疫を行い、ラットモノクローナル抗体を作製した。MyD88欠損成熟樹状細胞、野生型の未熟および熟樹状細胞を用いてFACS解析により抗体のスクリーニングを行ったが、MyD88欠損成熟樹状細胞のみを陽性に染色する抗体クローンはまだ得られていない。 LPS刺激によりMyD88欠損樹状細胞に発現するタンパク質を調べるために、LPS刺激後の野生型とMyD88欠損樹状細胞の膜タンパク質を用いて、2次元電気泳動法により発現に差が見られるタンパク質の比較解析を行った。MyD88欠損樹状細胞にのみ確認されるタンパク質スポットが得られている。 寄生虫感染は一般にTh2細胞分化を誘起する事が知られている。今回、旋毛虫(Trichinella spiralis)を用いて、樹状細胞活性化物質の精製を試みた。祖抽出物中にプロテアーゼとRNaseに感受性を有する活性が確認された。その活性はMyD88依存性である事から、TLRの関与が考えられている。
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