研究概要 |
寄生虫感染は、一般にTh2細胞分化を誘起すると考えられている。寄生虫成分が樹状細胞を活性化し、Th2細胞分化支持能を有する抗原提示細胞に分化誘導していると考え、樹状細胞をアッセイ系に用いて寄生虫成分の精製と性状解析を行った。樹状細胞はマウス骨髄細胞をhuman Flt-3 ligandと共に培養し作成した。旋毛虫(Trichinella spiralis)筋肉内幼虫の抽出液に存在し、樹状細胞からのIL-12産生および補助機能分子(CD40,CD86)の発現増強を誘導する活性について検討を行った結果、その活性はProteinase KおよびRNase Aに感受性を有することから、タンパク質およびRNAと推定された。さらに、MyD88、TLR7およびTLR9欠損樹状細胞は、その活性に反応しない事が明らかとなった。活性は界面活性剤による可溶化が可能であり、粗精製を行った結果、分子量(10,000)を決定することができた。しかしながら、構造決定には至っていない。 樹状細胞の1種である形質細胞様樹状細胞(PDC)は、TLR7/9リガンド刺激によりIFN-αを大量に産生し、抗ウイルス免疫に重要な役割を有すると考えられる。IFN-α産生には、MyD88およびIRF-7が不可欠である事が示されたが、その分子機構は不明であった。そこで、各種遺伝子欠損マウスのPDCを用い、IFN-α産生について検討を行った結果、IKK-α欠損マウスのPDCはTLR7/9リガンド刺激によりIFN-αを産生しない事が明らかとなった。次に、キナーゼ活性欠損型IKK-α変異体はMyD88とIRF-7による協調的なIFN-αプロモーター活性化を抑制する事、さらにIKK-αはIRF-7と会合し、リン酸化する事を解明した。これらの結果から、IKK-αはTLR7/9刺激によるIFN-α産生に重要である事が明らかとなった。
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