Fc受容体(FcR)は、免疫グロブリン(Ig)のFc領域と結合し、アレルギー、自己免疫、炎症など様々な免疫反応に関わる重要な因子である。これまでIgG、IgEに対するFcRは複数同定されていたが、IgAに対するFcRはFcα/μR、plgR、およびヒトでのみ同定されているFcαRI(CD89)の3種類しか知られていなかった。最近、ヒトおよびマウスの腸管粘膜面において新たなIgA受容体の存在が示唆されたことから、新規のFcR同定の試みとしてFcα/μRとplgRの間で相同性の高い免疫グロブリンドメインの配列をもとにしてヒトおよびマウスのcDNAデータベース検索を行った。その結果、細胞外にIgドメインを一つもつI型膜貫通タンパク質遺伝子が新たに見い出された。ゲノムデータベース検索によって、この新規のタンパク質にはヒト、マウスいずれにおいても少なくとも3種類のsplicing variantが存在することが明かとなった。ヒトおよびマウスにおけるmRNAの発現分布を調べたところ、両者とも胸腺や脾臓ではあまり発現していなかったが、心臓において最も高い発現が見られた。マウスにおいては、肝臓、腎臓、甲状腺、だ液腺、乳腺などでも高発現が確認された。しかしながら、splicing variantによる発現の組織特異性は見られなかった。さらに、このタンパク質をHeLa細胞に発現させて各種Igの取込みを観察したところ、Fcα/μRやplgRと同様に、IgAおよびIgMと特異的に結合することが明かとなった。同定した新規のFcRは粘膜上皮や内皮細胞で発現している可能性が示唆された。
|