肥満細胞はアレルギー応答に密接な関与が示されている。細胞表面にはFcεRIといった受容体が発現しており、抗原刺激により細胞内シグナル伝達経路が活性化され、顆粒に蓄積されたヒスタミンなどの化学伝達物質が細胞外に放出される。肥満細胞における脱顆粒応答には顆粒の膜への移動、細胞膜と顆粒膜の融合、顆粒内容物の再充填といった一連のプロセスにより遂行されていると考えられている。しかしながら、これら脱顆粒応答における制御機構に関する知見はほとんど得られていない。そこで顆粒の移動や融合などに関与している細胞骨格蛋白、アクチンやチューブリンが脱顆粒応答においてどのような挙動を示すか検討を行なった。FcεRI架橋刺激により、チューブリンの重合が促進されることが確認できた。一方、アクチンは細胞皮層にリング状に染色され、刺激依存的にアクチンの脱重合が観察された。阻害剤を用いて細胞骨格蛋白の挙動と脱顆粒の影響を調べたところ、微小管形成阻害剤であるnocodazol処理で脱顆粒が低下することが分かった。またこれらと一致してFyn、Gab2欠損肥満細胞においても微小管形成が低下していることが判明した。次に、Gab2依存的な微小管形成に関与する分子の検索を行ったところ、RhoAが微小管形成、脱顆粒を制御していることが判明した。更に、CD63-GFP融合蛋白を用いた顆粒可視化法により、FcεRI架橋刺激依存的な微小管形成が顆粒の移動に関与していることを示した。さらに興味深いことに、微小管形成や顆粒の細胞膜への移行にはEGTA処理あるいは小胞体からのカルシュムを抑制した条件においても観察された。以上の結果よりFcεRI架橋刺激による顆粒の移行にはカルシュウム非依存性の微小管形成のプロセスが含まれており、これら微小管形成制御にFyn/Gab2/RhoAを介するシグナル伝達経路が関与していることが示唆された。
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