研究概要 |
記憶B細胞で発現増強しB細胞の生存を促進する分子の一つとして、survival motorneuron (SMN)を同定することに成功した。SMNによる生存促進の分子機構を明らかにする目的で、FLAG-SMN過剰発現B細胞株と対照株からRNAを調製し、DNAマイクロアレイ(マウスDNAチップコンソーシアム)を用いて発現パターンの変化する遺伝子を解析した。しかしながら、対照株と過剰発現B細胞株において、発現量の変化する遺伝子を特定することはできなかった。そこで、抗FLAG抗体を用いた免疫沈降法によりSMN結合分子の単離・同定を試みたところ、SMNを過剰発現させたB細胞株で17本の特異的なバンドが検出された。これら17本のバンドを切り出し、トリプシンによりペプチドに分解しMass spectrometryでアミノ酸配列を解析したところ、他の細胞株でSMNへの結合が報告されているGemin2,3,4,5,6などのタンパク質の他に、これまでSMNとの結合が報告されていない9個のタンパク質が同定された。この中で58kDのタンパク質は酸化ストレス抑制作用を有するapoptosis-inducing factor (AIF)と判定されたため、SMNが酸化ストレス存在下でのB細胞増殖に与える影響を調べたところ、SMN過剰発現B細胞株では存在下での細胞増殖速度が増加していた。さらに、SMNの各エクソンを欠失した変異SMNに対するAIF結合能を測定したところ、AIFはSMN第6エクソンに結合していることが判明した。以上の結果から、SMN/AIFの相互作用がB細胞の抗酸化ストレス作用を制御している可能性が推察された。
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