(1)エントロピーを用いた患者動態の定量的分析 患者の受療行動を確率的事象と捉え、情報理論に基づくエントロピーの概念を応用した患者動態の定量的分析を地図情報システム(GIS)上で分析した。分析には北海道が行った「平成12年5月診療分国民健康保険患者受療動向調査結果」を使用した。対象は北海道の21医療圏とした。分析は、患者側からみた尺度として当該医療圏において他20医療圏への患者の流出率および自圏域依存率から依存度エントロピーを、医療機関側からみた尺度として当該医療圏において他20医療圏からの患者の流入率および自圏域患者率から診療圏エントロピーを医療圏ごとに算出した。分析の結果、入院全体では依存度エントロピーまたは診療圏エントロピーの大きい医療圏は18圏域あったのに対し、外来全体では6圏域であり入院と外来では情報量に大きな差があることが明らかとなった。 (2)空間的相互作用モデルを用いた2次医療圏の分析 北海道の2次医療圏から出発する移動患者の総数を制約条件とする、発生量制約型モデル(重力モデルの変形型モデル)を患者の受療行動に適用し、地図情報システム(CIS)上で分析した。分析には、上記と同じ調査結果を使用した。分析は重回帰分析により到着医療圏の病院数による吸引力の大きさを示す指標βと2次医療圏間の地理的距離抵抗の大きさを示す指標γを推定し、両者の関係について検討した。モデルの妥当性を検討した結果、決定係数は入院0.752外来0.816であり、患者動態に本モデルを適用することは問題なかった。入院・外来別では、入院より外来の方がβ、γの値がともに大きく、通院は到着医療圏の病院数による影響を強く受け、移動に対する距離抵抗が大きいことが明らかになった。北海道の患者動態に及ぼす影響は到着医療圏の病院数よりも2次医療圏間の地理的距離による影響が大きいことが示唆された。
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