本研究では、ITを活用した地域医療情報ネットワークの活用が、真に「患者中心の医療」にとって有効性を発揮するためには、医師や看護師のみならず、医療事務従事者も含めた医療機関職員に対する情報倫理教育、ならびに患者及び患者家族に対する支援体制を包含した情報倫理教育が不可欠であるとの観点に立脚し、その教育プログラムの確立のために、以下の項目を明らかにすることを目的とした。(1)何をもって患者の「プライバシー」とするのか、とりわけ医療情報が持つ特質を踏まえ「個人情報」と「プライバシー」の関係についての考察を通じて、「いかなるデータ・セットを患者のプライバシーと考えるのか」を明確にする、(2)ネットワーク運用におけるプライバシー・ポリシーの具体的な作成指針の検討、(3)職員・職種の特性に応じたアクセス・レベルの設定方法、(4)不正アクセスへの(法的対応も含めた)情報倫理的対応策。 以上4点のうち、15年度は特に(1)(2)の問題を中心にMEDLINE検索によって文献を絞り、患者のプライバシー保護と電子カルテシステムの関係にかかわる文献を調査した。その結果、情報インフラ・情報社会指数(ISI)が2003年の調査で首位(米国は8位)を占めたスウェーデンにおいて、医療情報に関するさまざまな制度・法整備が行われていることが判明したため、海外調査対象国を当初予定していた米国からスウェーデンに改め、平成16年1月にストックホルム、ウプサラにて現地調査を行った。スウェーデンでは2003年1月より「バイオバンク法(The Act on Biobanks)」が施行され、その中でDNAや血液サンプルなど、患者の医療健康情報における個人情報およびプライバシー保護について規定している。個人特定可能な情報は全てこの法律の対象となっており、現在、この法制度を中心にスウェーデンにおける患者プライバシー保護のシステムについて調査を継続している。
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