セカンド・オピニオンについての意識調査を行うために、まずわが国におけるセカンド・オピニオンの実態の把握を目的とした文献調査を行った。米国では医療制度に起因してセカンド・オピニオンという概念が生じた。個々の医師が個別に診療を行い、治療に必要な設備については契約を交わしている病院に頼るという形式をとることが多い。患者としては専門医による総合的な医療を提供されているという安心感が得られにくい状態となっており、セカンド・オピニオンを求める動きが強くなった。医療における権利を訴えるこのような市民意識の向上とともに、医療費の抑制を図ろうとするHMOの目的が一致してセカンド・オピニオンは発展した。ゆえに米国におけるセカンド・オピニオンは患者の利益のみならず、保険会社の医療費削減の意味合いの強いものとなっている。しかし、最近ではHMOの過激な医療費抑制政策に不信感を募らせた患者が本来の意味でのセカンド・オピニオンを求めるようになってきている。 これに対して日本では、アメリカの影響を強く反映しているものの、医療費抑制の意味合いはほとんど含まれていない。昨今の医療事故の増加による医療の信用の低下は更にセカンド・オピニオンの必要姓を高めていると考えられる。セカンド・オピニオンは導入のされ方を誤ると過剰な医療による医療費の更なる高騰や、医療への不信感の増大、医療の不適切な分配などを招き、患者の不利益を生み出す原因となりかねない。日本においてセカンド・オピニオンの普及が適切に行われるためには患者、医療従事者双方への的確な教育が求められる。単に医療制度の異なるアメリカの真似をするだけでは誤った方向に進みかねない。本年は慶應義塾大学医学部との共同研究の下、文献調査の結果を踏まえて患者、医療従事者、一般住民に対するアンケート調査の作成を行った。そしてまずは慶應義塾大学病院の外来通院患者約600名を対象にアンケート調査を実施した。結果については現在解析途中である。
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