平成15年度は、ヒトMCT1およびヒトMCT4の薬物輸送能に関する知見が得られた。 アフリカツメガエル卵母細胞に、in vitro合成したMCT1またはMCT4 cRNA、また対照として水を注入し、18℃で3日間培養後、輸送実験を行った。輸送特性は、一定時間に卵母細胞へ取り込まれた放射標識薬物量を測定することにより評価した。MCT1 cRNAまたはMCT4 cRNAを注入した卵母細胞への[^<14>C]L-乳酸、[-<14>C]サリチル酸の取り込みは、細胞外pH6.0の条件下、水を注入した卵母細胞への取り込みと比べ有意に高く、時間依存的に増加した。MCT1を介したサリチル酸の輸送は、酸性側pHで高く、pH依存性が示された。pH6.0におけるみかけのKt値として約0.8mMが示された。これまでに、MCT1を介した[^<14>C]L-乳酸の輸送に対して、糖尿病薬であるナテグリニドは阻害作用を有するが、それ自身は輸送基質とならないことが示されていた。今回、MCT4 cRNAを注入した卵母細胞への[^<14>C]ナテグリニドの取り込みは、細胞外pH6.0の条件下、水を注入した卵母細胞への取り込みと比べ有意に高く、時間依存的に増加することが示された。 以上より、サリチル酸がMCT1およびMCT4により、ナテグリニドがMCT4により輸送されることが示唆された。MCTsは乳酸やピルビン酸、ケトン体等の内因性モノカルボン酸のみならず、カルボキシル基を有する薬物を認識する可能性が考えられた。
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