平成16年度は、消化管のモデル細胞であるCaco-2細胞および胎盤における発現が既に示されているヒトMCT6の薬物輸送能に関する知見が得られた。 モノカルボン酸トランスポーターファミリーのメンバーであるMCT6(SLC16A5)はmRNAレベルにおける臓器発現解析が示されているのみで、本研究により輸送機能が初めて明らかにされた。 アフリカツメガエル卵母細胞にin vitro合成したhMCT6 cRNAを注入し、18℃で2-3日間培養後、放射標識化合物の取り込み実験を行った。 まず、基質のスクリーニングを行ったところ、[^3H]bumetanideに対し高い輸送活性を有することが示された。更に、[^3H]probenecid、[^3H]prostaglandin F_2αなどを輸送することが示された。一方、hMCT6を介したL-lactic acid、estrone-3-sulfate(ES)、p-aminohippuric acid(PAH)の取り込みは認められなかった。hMCT6を介した[^3H]bumetanideの取り込みは飽和性を示し、Ktは約80μMが得られた。また、取り込みはpH依存性を示し、PAH、ES並びに4種のループ利尿薬、3種のチアジド系利尿薬、probenecid、cimetidineなど薬物によって阻害されたが、L-lactic acidでは阻害が認められなかった。 以上より、MCT6は他のMCT1-MCT4と異なり、乳酸などの短鎖のモノカルボン酸を認識せず、薬物など比較的分子量の大きな化合物を認識すると考えられた。その基質認識性は、薬物トランスポーターとして既に知られているorganic anion transporterやorganic anion transporting polypeptideとも異なることが示された。
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