フローサイトメトリーを用いて、腫瘍表面抗原とテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)蛋白の発現を抗hTERT抗体によって、同時に測定する方法を開発することを目的に、本年度の研究を行った。 本年度は前年度の研究をもとに、引き続き細胞膜固定、透過処理の検討とhTERT抗体の選定をおこなった。前年度まで検討したSanta-Cruz社の3種類のpolyclonal抗体に替え、NovoCastra社のmouse monoclonal抗体を使用してみたところ、造血器腫瘍細胞株において非常に蛍光強度の高い陽性が得られた。これが、偽陽性ではないことを確認する目的で、hTERTを発現していない正常人の好中球で試したところ完全に陰性であった。また細胞内局在を確認するため、細胞株と正常人好中球のサイトスピン標本を作成し免疫細胞染色をABC法で行ったところhTERTは細胞株の核内のみに染色された。hTERTは細胞質ではなく核内で染色体末端のテロメアを伸長する酵素であることから、この染色性は特異的なものであると考えられた。 Informed Concentを得たmyelodysplatic syndromeとacute leukemiaの患者から採取された骨髄検体におけるhTERT発現を、3 colorフローサイトメトリーを用い細胞表面抗原CD45 CD34にてblastとstem cell分画、成熟顆粒球分画にわけて解析した。またこの方法によるhTERT発現とテロメラーゼ活性が相関するかについても、ライトサイクラーを用いたreal time PCR法によるhTERTmRNA発現量検討、PCRを基礎にしたTelomere Repeat Amplification Protocol(TRAP)とELISAを組み合わせた方法によるテロメラーゼ活性を測定し検討した。 少数例の検討であるが、hTERT発現はやはりCD34陽性のstem cell分画で高く、成熟するにつれて減少する傾向がみられた。また、フローサイトメトリーによるhTERT発現量もhTERTmRNAもテロメラーゼ活性も、細胞株で最も高く、患者骨髄検体で中間程度、好中球では全く見られないという相関関係も認められた。
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