研究概要 |
生体肝移植において樹状細胞(DC)およびNKT細胞の移植片に対する拒絶あるいはその制御との関連について、マウスおよびヒト症例を用いて行った研究によって得られた新たな知見の成果を以下に示す。 1.マウスおよびヒト肝樹状細胞の性状比較解析 マウス肝から効率よくDCを分離する方法を樹立したものの、絶対数は脾に比べ、約1/3であった。マウス肝DCの細胞表面抗原についてI-A,CD40,CD80,CD86は低発現であり、未成熟DCであった。しかし、肝にも成熟DCを認め、未成熟と成熟の割合は肝、脾それぞれ6:4,2:8であった。ヒトはマウスと異なり、肝DCはHLA-DR,CD40,CD80,CD86,CD83を発現した成熟タイプが多く、末梢血DCはHLA-DRとCD86を発現しているが、CD40,CD80,CD83の発現は低いので、未成熟であることが示唆された。 2.マウス肝樹状細胞の機能解析 マウス肝DCの抗原提示能はOVA特異的T細胞クローン増殖反応およびリンパ球混合反応(MLR)で検討したものの、脾DCと比較してその能力は低かった。さらにDCを成熟させると報告のあるエストロゲンを投与し、その細胞表面抗原とMLRについて解析した結果、コントロール群に比べエストロゲン投与群の肝DCにI-A,CD40,CD80,CD86の発現増強を認めたものの、MLRでは抑制を認めた。細胞表面マーカーと機能との乖離があることから、機能的に肝と脾のDCは異なる可能性が示唆された。 3.ヒト生体部分肝移植における樹状細胞およびNKT細胞の動態および相互関係について 生体部分肝移植後のDCについて、まだ検討症例数は少ないものの、拒絶反応の有無と移植肝内および末梢血DCの変動に相関が見られるため、拒絶反応の制御にDCが何らかの機能を担っている可能性が示唆された。DCとNKT細胞の相互関係については現在検討中である。
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