自己免疫性甲状腺疾患患者(バセドウ病および橋本病)を病歴および検査成績の経過により病態分類を行い、それぞれの患者から大阪大学研究倫理審査委員会にて承認された方法に従ってインフォームドコンセントをとり、匿名化したサンプルDNAおよび血清を、各疾患病態によってはサンプル数が解析可能な数まで収集した。 これまでに患者血清のインターロイキン10濃度が、バセドウ病の難治群において、寛解導入できた群よりも高くバセドウ病では、2型ヘルパーT細胞が分泌するサイトカインのうち、インターロイキン10が特に強く関与している可能性が示唆された。また、インターロイキン10が誘導するイムノグロブリンG3サブクラス産生細胞数が、同様にバセドウ病の難治群において増加していることから、血清イムノグロブリンG3濃度を測定したところ、バセドウ病の難治群に高濃度であることが明らかになった。さらに橋本病の重症群では可溶性CD8分子が末梢で低濃度であることも明らかにし、リンパ球表面のCD154やCD95が自己免疫性甲状腺疾患の病因あるいは病態に関連している可能性も明らかにした。 またバセドウ病甲状腺内に浸潤している樹状細胞が調節性細胞の数をコントロールしている可能性を明らかにし、病態予後にかかわっている可能性を示した。 これらの結果のうち、Th1/Th2バランスが病態予後に関係している可能性をゲノムレベルで明らかにするために、インターフェロンγの産生量を規定しているとされる遺伝子多型の分布について検討した結果、橋本病の重症度と関連があることを明らかにし、一部結果は特許出願し論文投稿中である。
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