甲状腺癌の放射線治療の有効性を予測するマーカーの測定法の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15790278
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 中田 幸子 大阪大学, 医学系研究科, 助手 (00346222)
• キーワード: 甲状腺乳頭癌 / ^<131>I内照射 / TaqMan PCR / NZS遺伝子

研究概要

甲状腺乳頭癌は日本においては甲状腺分化癌のうちの約80%を占め、その進行は緩徐であるが、転移率は高い。甲状腺乳頭癌の肺転移に対しては^<131>Iの内照射が現在唯一の治療法であり若年者において治療がより効果的であるがその理由は未だ明らかではない。今回我々は甲状腺乳頭癌において年齢とヨード取り込みに関与するNIS遺伝子発現の関連について検討した。
(方法)若年者(30才未満)27名(男性6名、女性…21名)、老年者(50才以上)32名(男性2名、女性30名)の甲状腺乳頭癌原発巣の手術検体を用いてTaqMan PCR法にてNIS遺伝子発現量を測定した。同時に2群における腫瘍原発巣の大きさ、血中サイログロブリン値、リンパ節及び肺転移の有無についても比較検討した。
(結果)若年者群(平均年齢25±4才)と老年者群(平均年齢59±8才)ではNIS遺伝子発現量自体は群全体としては有意差を認めなかったが、若年者群では老年者群に比し明らかにNIS遺伝子発現量の個体差が大きく、若年者乳頭癌においてNIS遺伝子発現の高い群と低い群に分類できる可能性が示唆された。腫瘍の原発巣の大きさ、血中サイログロブリン値、リンパ節および肺転移の頻度については年齢によって違いを認めなかった。
(考察)甲状腺乳頭癌において若年者と老年者ではNIS遺伝子発現量は違いを認めなかったが、若年者の中にNIS遺伝子発現の極めて高い群が存在し、これが若年者における^<131>Iの内照射の効果が良好なことに関連する可能性が考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Takano T, Miyauchi a, Matsuzawa F, Yoshida H, Nakata Y et al.: "PGP9.5 mRNA could contribute to the molecular-based diagnosis of medullary thyroid carcinoma."Eur J Cancer. 40(4). 614-618 (2004)
• [文献書誌] Amino N, Izumi Y, Hidaka Y, Takeoka K, Nakata Y et al.: "No increase of blocking type anti-thyrotropin receptor antibodies during pregnancy in patients with Grave's diseases."J Clin Endocrinol Metab. 88(12). 5871-5874 (2003)
• [文献書誌] Amino N, Hidaka Y, Takano T, Tatsumi KI, Izumi Y, Nakata Y.: "Possible induction of Grave's diseases and painless thvroiditis by Gonadotropin-relaeding hormone analogues."Thyroid. 13(8). 815-818 (2003)
• [文献書誌] Amino N, Hidaka Y, Takano T, Tatsumi KI, Izumi Y, Nakata Y.: "Association of seasonal allergic rhinitis is high in Grave's disease and low painless thyroiditis"Thyroid. 13(8). 811-814 (2003)
• [文献書誌] Takano T, Miyauchi A, YoshidaH, Nakata Y, Kuma K, Amino N: "Expression of TRbeta 1 mRNAs with functionally impaired mutations is rare in thyroid papillary carcinoma."J Clin Endocrinol Metab.. 88(7). 3447-3449 (2003)