研究概要 |
日本は、世界一の長寿を誇っており、心疾患死亡率も世界で最も低率である。その原因としては、食物の機能性物質の多量摂取が考えられる。機能性物質の作用機構は多様であるが、中でも抗酸化機能が注目されている。ω-3系多価不飽和脂肪酸、ケルセチンやカテキンなどの抗酸化機能性物質の抗動脈硬化作用は、酸化軽比重リポ蛋白(LDL)の産生阻害にあると考えられている。しかし、その作用機構は不明な点が多い。 そこで、1)ω-3系多価不飽和脂肪酸によるPPAR-_YやSREBP-1cなどの転写制御遺伝子との抗酸化機能性相互作用を明らかにする。2)血管内皮細胞から抗酸化機能性物質による新規の転写制御遺伝子をクローニングし、解析する。3)血管内皮細胞における新規転写制御遺伝子の抗酸化機能性プロセスを明らかにすることで、ヒト血管内皮細胞株(HUVEC)による食品中の抗酸化機能性物質の抗動脈硬化作用を明らかにすることを目的とした。 まず、桑葉よりLDLの酸化阻止活性を指標に抗酸化成分の分離精製を行った。70%エタノール抽出、水-酢酸エチル分配、HP20樹脂カラムクロマトグラフィー、分取用HPLCによる精製を行い、100g桑葉より120mgの精製品を得た。この精製品について、NMR、元素分析、LC-MSにより構造解析を行った結果、ケルセチン配糖体の新規化合物であることが明らかになった。この抗酸化機能物質は、in vitroではケルセチンと同様のLDL酸化阻止活性を有し、島根県産桑葉には最も含有量の多い抗酸化機能物質であった。 このケルセチン配糖体など食品由来の抗酸化機能物質について、ヒト血管内皮細胞株(HUVEC)をもちいた転写制御遺伝子発現調節による抗酸化機能性プロセスを検討した。増殖因子(TNF-α)で処理したヒト血管内皮細胞株(HUVEC)にこれらの抗酸化機能物質加えて培養し、CD54,ICAM-1などの転写制御を検討している。
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