研究概要 |
著者はこれまで、小中高生を対象にいじめと精神保健指標との関連を、質問紙調査で検討し、いじめる、いじめられる両経験群の自尊感情、登校意欲、希死念慮等の精神保健指標が他群(加害、被害、傍観、無関係)に比べ最もネガティブであることを明らかとした。 それを踏まえ、本研究は、中学生男女を対象に、縦断的な疫学研究の手法を用い、両経験群の加害者から被害者になるパターン(加害-被害移行型)と、被害者から加害者になるパターン(被害-加害移行型)の分布を明らかにすることと、加害-被害型と被害-加害型の精神保健指標およびいじめる理由・方法に差があるのかどうかを検討する。 平成15年度に作成した質問紙を用いて、群馬県内の公立中学校7校を対象に、第1回目の自記式の質問紙調査を平成16年7月に行った。対象者は中学校2年生男女1,533名である。質問項目は、基本的属性、睡眠時間、学業成績、主観的幸福感、経済状況、不登校日数、カウンセリングの有無、部活動状況、身体的健康状態、精神的健康状態、孤独感、社会的支援、自尊感情、人間関係(学校、友人、家庭)、ライフイベント、抑うつ状態、不登校気分、希死念慮、いじめ関連項目等である。 第1回目の調査の結果、1,462名(95.4%)の有効回答を得た。男子では加害群が13.7%、両経験群が4.6%、被害群が7.9%、傍観群が32.0%、無関係群が41.9%であり、女子ではそれぞれ、13.2%、5.9%、6.9%、35.8%、38.1%であった。男女ともに両経験群と被害群の精神保健指標が他群に比べ悪く、特に両経験群の希死念慮が高かった。 また、平成17年3月に第2回目の調査を同じ対象者に行っている。質問紙の内容は第1回目の調査と同様である。 本調査の予備調査に相当する平成13年1月の中学生を対象とした調査の内容を日本学校保健学会で平成16年11月に発表した。
|