研究目的:全国の救命救急センターと大学病院救急部における外傷登録に関するベースライン調査(昨年度実施)をもとに、今年度は追跡調査を行い、2004年1月より開始された「外傷データバンク」(外傷登録の全国規模でのデータベース化)に参加した施設と参加しなかった施設の特徴を検討した。 方法:ベースライン調査に応じた84施設を対象に追跡調査を行った。調査は郵送・FAXで行い、おもに外傷データバンクへの参加の有無を確認した。追跡調査には58施設が回答に応じた。 結果:各施設ですでに診療記録をデータベース化している施設(13/42[42%])のほうがそれ以外の施設(2/27[7%])よりも外傷データバンクに参加していた。また、入力用コンピュータを設置している施設、入力スタッフを雇用している施設、外傷データバンクの登録項目が既存の診療記録に含まれている割合が高い施設ほど参加する傾向にあった。一方、常勤医師一人あたりの登録患者数の大小と外傷データバンクへの参加とはあまり関係がなかった。 考察:外傷データバンクへの参加は既存の診療記録体制によるところが大きい。したがって、これから診療記録のデータベース化に取り組む施設には技術的なサポートが必須である。データ入力にあたっては、機材(ハード)と人材(ソフト)の両面を充実させていく必要がある。今後、わが国ではトラウマ・レジストラー(Trauma registrar)のような外傷データ登録の専門家を養成することが求められるであろう。 その他:タイ保健省・コンケン病院外傷センターの外傷登録制度の活用事例として、二輪車事故による死傷とヘルメット着用ならびに飲酒との関係を検討するため、データを準備した。
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