本研究は縦断研究により軽症認知症(痴呆)と日常生活動作との関連及び地域での活動に参加する高齢者における認知症の罹患率を明らかにすることを目的とする。 本年度は昨年度に実施した研究対象者のベースライン調査(日常生活に関する調査、血圧測定及び認知症スクリーニング検査)の結果報告会を年度当初に研究対象者を含む「元気でいきいき教室」参加者に対して行った。またベースライン調査から1年半経過した年度末にベースライン調査時と同様の内容の調査を再度、研究対象者に対して実施した。 我が国で高齢化が最も進行している島根県の東部に位置するH町の60歳以上の高齢者クラブ員で、ベースライン調査時に調査協力の同意が得られた研究対象者278名(男77名、女201名)のうち、H町と協力して開催した本年度末の「元気でいきいき教室」に参加し、日常生活に関する調査、血圧測定及び認知症スクリーニング検査(改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)、かなひろいテスト)に応じたのは128名(男37名、女91名)であった。この128名中22名(17.2%)がかなひろいテストの結果から脳機能活性度が低下している疑いのある者と評価された。またこの128名についてベースライン調査時にかなひろいテストにて脳機能活性度が低下していないと評価された107名のうち、今回の調査でかなひろいテストにて脳機能活性度が低下している疑いのある者と評価されたのは9名であった(脳機能活性度が低下していると思われる者の割合8.4%)。 今後は日常生活に関する調査のデータ入力および集計、HDS-Rのデータ集計を進め、軽症認知症と日常生活動作との関連について解析を行うとともに、HDS-Rによるベースライン調査時から1年半経過後の認知症の罹患率を明らかにする予定である。
|