研究概要 |
血液中のダイオキシン類濃度が一般的な汚染濃度範囲(おおよそ10pg〜50pg)にあった5名の被験者と、血液中ダイオキシン類濃度が一般的な汚染濃度範囲を越えた5名の被験者の血液中ダイオキシン異性体組成から、1,2,3,7,8-PeCDD、2,3,4,7,8-PeCDF、1,2,3,6,7,8-HxCDD、3,3,'4,4'.s-PeCBおよび2,3,3',4,4',5-HxCBの5種の異性体を含むものが厚生労働省の暫定公定分析法で得られたダイオキシン類の総濃度の約60%〜80%になる高い比率を占め、被験者に共通して主成分となっていることを見出した。 そこで、これら5種の指標異性体の総濃度に対する寄与率(%)について経時的変動を調べ、その恒常性を検討した。その結果、ダイオキシン類濃度が一般的な汚染濃度範囲にあった5名の被験者における3ヶ月間、および血液中ダイオキシン類濃度が一般的な汚染濃度範囲を越えた3名の被験者における6ヶ月間で、指標異性体の合計濃度の総濃度に対する寄与率(%)は60%から80%の範の範囲を越えることがなく、主成分となる指標異性体は殆ど変わらなかった。このように、被験者には生活環境の違い、特に影響の大きい食事あるいは好み等の違いによる影響を受けていると考えられるにも関わらず、総濃度の約60%〜80%になる高い比率を占めた5種の指標異性体の寄与率は一定であることが明らかとなった。さらに、これまでに報告されているダイオキシン類の主要発生源である焼却施設の労働者や高レベルのPCBやPCDFの暴露を受けた油症患者においても、この5種の指標異性体の濃度から総濃度に換算する簡易な評価が可能であるという知見が得られた。
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