わが国の介護労働の現状把握及び介護労働者に対する疲労調査研究を行った。さらに、北欧における介護労働の現状及び対策についての海外調査研究を行った。 1.わが国における介護労働の現状:2000年に介護保険制度が開始された後、介護労働者は急速に増加を認めており、パート労働である登録ヘルパーがその8割を占めている。さらに、ヘルパーステーションは1000名以上の登録ヘルパーを有するところから50名程度の小規模のものまであり、それぞれに対応した産業保健対策の推進が必要との意見がステーション責任者等より認められた。また、介護におけるヒヤリハット事例分析においては、利用者の転倒予防対策、感染症対策が必要と考えられた。 2.自記式質問票を用いての介護労働者を対象とした疲労調査:日本産業衛生学会産業疲労研究会撰「自覚症しらべ」(2002年)と職務満足に対する質問を加えた自記式記入票を用いて、ホームヘルパー575名より回答を得た。パート労働者72.0%、50歳代40.2%で、平均1日労働時間は3時間以下が59.5%を占めた。I群・ねむけ感、III群・不快感、IV群・だるさ感、V群・ぼやけ感は、終業時にスコアの増加を認め、特に、IV群・だるさ感は始業時より高く、終業時の増加幅も大きかった。また、I群・ねむけ感は終業時の増加幅がもっとも大きかった。以上より身体的負荷が大きいことが示唆された。また、職務満足については、64.4%が満足していると回答した。 3.北欧における介護労働の現状及び対策について:スウェーデン及びデンマークでは、介護労働に対する産業保健対策が推進されており、介護職に対して、介護サービスのプランを作成する役職であるアセスメントオフィサーが介護職の労働環境整備の責任者として機能していた。また具体的な介助や安全に対する教育が作業療法士などから実施されていた。これらの対策は、わが国の介護労働者の産業保健対策として参考になるものと考えられた。
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