1.チオシアン酸鉄法が過酸化脂質の測定法として有用であることを確認した。測定にあたっては、脂質抽出に工夫が必要であった。血漿および肝臓組織ホモジネートからの脂質抽出には、Bligh and Dyerの方法を用い、赤血球膜の場合には、イソプロパノール/クロロホルム抽出の後、Bligh and Dyer抽出を行った。 2.合併症のないアルコール依存症患者を対象とし、血漿中および赤血球膜中の脂質ヒドロペルオキシドを、チオシアン酸鉄法により定量した。また、血漿中スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)活性をNBT法にて測定した。アルコール依存症患者では健常人に比べ、血漿中脂質ヒドロペルオキシドが増加していた。一方、血漿中SOD活性は低下していた。また、赤血球膜中脂質ヒドロペルオキシドも増加していた。脂質ヒドロペルオキシドは、積算飲酒量と正の相関を示した。この結果より、アルコール依存症患者では脂質過酸化が亢進していることを明らかにし、エタノール代謝に伴う継続的な活性酸素生成とSOD活性の低下が、アルコール依存症患者において酸化ストレスを増大させている可能性を示した。 3.アルコール性脂肪肝のヒト肝臓組織ホモジネート中の脂質ヒドロペルオキシドをチオシアン酸鉄法にて測定した。正常肝に比べて脂肪肝では単位重量あたりの脂質ヒドロペルオキシドの著しい増加を認めた。但し、脂肪肝では単位重量あたりの脂質量も増加していた。そこで、脂質ヒドロペルオキシド/脂質および脂質ヒドロペルオキシド/蛋白を求めたところ、いずれも脂肪肝では増加が認められた。この結果より、アルコール性肝障害に脂質過酸化が関与している可能性を示した。
|