【目的】アルコール禁断症状発現に関与する脳内神経伝達物質を検討するために、慢性アルコール依存動物モデル(ラット)を作成し、禁断前後におけるドパミン動態を脳マイクロダイアリシス法を用いて検討した。 【方法】週令4-5週令(90-100g)のラット(SD系、雄)に、5%アルコール含有液体試料を体重250-300gになるまで(7-8週間)摂取させ、アルコール禁断前後における前頭前野皮質(n=5)、線条体(n=4)、側坐核(n=4)の細胞外ドパミン動態について、24時間、行動とともに測定し、それらの関係について検討した。 【結果】アルコール摂取開始から7-8週間のラットでは、前頭前野皮質における細胞外ドパミンは全例で検出できず、また、禁断前後において有意な変化を示すものではなかった。線条体および側坐核においては、細胞外ドパミンは検出できる例とできない例が存在し、また、これらは前頭前野皮質と同様に禁断前後において有意な変化を示すものではなかった。一方、アルコールを含まない液体試料を上記の実験群とほぼ同カロリー(ノーマルラットよりも摂取カロリーは30%ほど低い)与えたラット(n=2)においても、前頭前野皮質で細胞外ドパミンの検出は困難であった。 【考察・結論】以上の結果から、アルコール禁断症状発現時における上記各脳部位におけるドパミンの関与は低いように思われた。また、前頭前野皮質における低濃度細胞外ドパミンは、アルコールによる直接的なドパミン作動性神経の障害ではなく、むしろ栄養不良による可能性が示唆された。一方、このドパミン作動性神経の障害が禁断症状の発現に関与している可能性もあり、今後、脳内へのドパミン投与などの薬理学的検討を行い、その詳細を検討する予定である。
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