アルツハイマー病は脳とくに海馬の神経脱落によると言われているので、eugenolにより、この(1)神経死の抑制および(2)神経再生の促進により治療できる可能性を考え研究を進めた。 (1)神経死の抑制に関しては、アミロイドβで神経死を誘導するin vitroの系を用いて、eugenolおよびその誘導体がこの死を抑制すること、中でもeugenolが最も強い作用を持つことを明らかにした。また、eugenolが酸化ストレスを発生する酵素を選択的に抑制することも明らかにした(以上、論文作成中)。現在、より生体に近いアルツハイマー病モデルとして、a)ヒトアミロイドβ遺伝子トランスジェニックマウス、b)ヒトアミロイドβタンパクを海馬にマイクロインジェクションして作成したラット、を用い、これにeugenolを投与して、記憶の変化、組織病理的変化の抑制について検討中である。 (2)海馬における神経再生の促進については、一般に抗うつ剤がこの作用を持つことから、まずマウスを用いてeugenolの抗うつ作用を検討したところ、imipramineと同等の作用が、Tail suspension TestおよびForced Swim Testの両方にて認められた。また、この作用メカニズムは、神経保護作用のあることを最近我々が見つけた「metallothionein-III」の海馬での発現を誘導することによるらしいことを示した(以上、論文投稿中)。現在、eugenolが実際に海馬において神経再生を起こすかどうか、eugenolを経口投与したマウスにBrd-Uを腹腔内投与して、この脳におけるBrd-Uと神経マーカーの二重染色を行い、確認中である。
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