本研究は幹細胞のマーカーとして新たに着目されたMsi-1の肝再生に関わる機能および個々の因子への作用を明らかにすることを目的とし、in vitroおよびin vivoでのMsi-1過剰発現モデルを作成し解析するものである。 1.Msi-1過剰発現のコンストラクト作成。 serum amyloid P componentプロモーターおよびMsi-1遺伝子のcDNAは、ベクターへ組み込まれコンストラクトは作成された。なお、コンストラクトの作成過程において、Msi-1遺伝子のcDNAには内部の2カ所に欠失部位があり、alternative exonの存在が明らかとなった。 2.安定細胞株の作成。 作成されたベクターはリポフェクチンを用いて、HepG2細胞へ導入された。ベクター内在の薬剤耐性遺伝子を利用したG418による選択的な培養で得られた細胞は、単離後増殖することが確認でき、それぞれクローン化された。癌細胞株のMsi-1過剰発現モデルとトランジェニックマウスは同一のコンストラクトを用いて作成するため、トランスジェニックマウス用の直線化されたコンストラクトも癌細胞株へ導入され、G418耐性の細胞がクローニングできることが確認された。 3.Msi-1過剰発現細胞株での下流遺伝子および肝特異的遺伝子の発現への影響。 クローニングされた細胞株においてMsi-1メッセンジャーRNAの発現はPCRによって確認された。現在Msi-1蛋白の発現を確認中である。確認後、直ちにマイクロアレイおよびRT-PCRでin vitroでの遺伝子群の発現を解析する予定である。同時にin vitroで機能を確認された同一のコンストラクトをマウスES細胞へマイクロインジェクションし、トランスジェニックマウス作成を開始する予定である。
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