研究概要 |
【背景・目的】長時間持続的なA型肝炎ウイルス(HAV)の増殖抑制を目指しRNase III-prepared siRNA、short hairpin (sh) RNA発現ベクターによるHAV IRES翻訳抑制およびウイルス増殖抑制の検討を行った。【方法】(1)HAV IRES領域に対するRNase III-prepared siRNAおよびHAV IRESドメインIIIa、IIId、IIIc、IV、Vに対するshRNA発現ベクター(H1-プロモーターをもつ)psh-IIIa、psh-IIId、psh-IIIc、psh-IV、psh-Vを作成した。(2)細胞株由来HAV IRESを含むbicistronic reporterを作成した。(3)ウイルス増殖抑制効果の判定にはDNA based-HAV replicon systemを使用した(Gauss-Muller V, J Gen Virol,2002)。(4)臨床検体(劇症肝炎3例、急性肝炎3例)由来のHAV IRESを含むbicistronic reporterも作成し効果を確認した。判定はルシフェラーゼアッセイにて行った。【成績】(1)RNase III-prepared siRNAを0.5、1.0μg投与48時間後のHAV IRESからの翻訳はそれぞれ79%、45%まで減少した。また、RNase III-prepared siRNAはHAV増殖も抑制した。HAV IRESを標的としたsiRNAは有効であることが確認された。(2)psh-IIId、psh-IIIcおよびpsh-Vを0.1μg投与後HAV IRESからの翻訳はコントロールと比較し48時間でそれぞれ28%、41%および31%、144時間でそれぞれ6.6%、26%および14%と経時的に減少した。HAV増殖も抑制した。(3)臨床検体由来のHAV IRESを用いた検討でもRNase III-prepared siRNAおよびpsh-IIId、psh-IIIc、psh-Vは翻訳抑制に有効であった。【結論】HAV IRES領域に対するsiRNAおよび薬剤はHAV増殖抑制に有用である可能性が示唆された。
|