肝細胞癌に特異的なCD8陽性Tリンパ球のHLA-A24拘束性エピトープを同定するために肝癌で発現が増加している抗原や他の癌において同定されている癌関連抗原のエピトープをもつ9-10アミノ酸からなるペプチドを合成した。このペプチドと肝細胞癌患者38人の末梢血リンパ球を用いて癌関連抗原に対する免疫反応の検出をenzyme linked immune-spot (ELISPOT) assayとcytotoxic T cell (CTL)assayを用いて行った。 今回の検討では6種類の抗原において抗原特異的なインターフェロンガンマ産生T細胞と細胞障害性T細胞(CTL)の誘導が可能であった。ペプチドで誘導されたCTLはHLA-A24陽性で、それぞれの抗原を発現している肝癌培養細胞株に対しても細胞障害活性を示し、今回検出された細胞障害活性が抗原特異的な反応であり、かつHLA-A24拘束性であることが示唆された。また今回検討した38人の肝癌患者のうち4人がB型肝炎ウイルスに、32人がC型肝炎ウイルスに感染していたが、こうした肝炎ウイルスの感染とは関係なく癌関連抗原特異的なCTLの誘導が可能であった。また癌関連抗原特異的なCTLの末梢血における細胞数はTNM分類における腫瘍因子や進行度と有意な相関を示し、癌が進行した患者においてより顕著に反応が検出された。さらに肝癌における局所治療や抗癌剤による化学療法の前後において、癌関連抗原特異的なCTL数を検討したところ、肝癌の治療がこうした癌特異的な免疫反応を増強させていることが明らかとなった。 また上記の如く、肝癌患者においてCTLの誘導が可能であった一部のペプチドを用いて、HLA-A24トランスジェニックマウスの免疫を行い、同マウスにおいてもペプチド特異的なCTLの誘導が可能であることと、投与の安全性を明らかにした。
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