研究概要 |
ヒト末梢血中には極めて大量の内因性1型インターフェロンを産生するplasmacytoid樹状細胞(pDC)と抗原提示能の高いmyeloidDC(mDC)が存在する.潰瘍性大腸炎(UC)患者の大腸粘膜内にはCD83陽性の成熟DCが存在していることを報告してきたが,末梢血pDC,mDCがその供給源であり大腸粘膜に遊走して活性化している可能性がある.UCの病態にpDCとmDCの遊走亢進が関与していることを明らかにすることを目的に以下の実験を行った. 末梢血から単核球を分離し4カラーフローサイトメトリー法でpDCとmDCを同定した.15名のUC患者における末梢血pDC数とmDC数を健常者24名と比較した.UC患者の末梢血pDC数(2.7±2.1/μl)は,健常者(4.4±1.6/μl)に比べて有意に減少していた(p<0.01).UC患者の末梢血mDC数(7.8±4.9/μl)も,健常者(15.0±5.7/μl)に比べて有意に減少していた(p<0.01). 末梢血pDC数,mDC数減少の原因として血中から大腸粘膜への遊走亢進が考えられる.したがって,DCのケモカインであるMIP-3αの血中濃度を測定したところ,UC患者の血清中MIP-3α濃度(58.5±54.6pg/ml,n=16)は,健常者(15.6±4.9pg/ml,n=30)に比べて有意に上昇していた(p<0.05). 現在,UC患者の大腸粘膜内にもpDC,mDCが存在するか否かを免疫染色法で解析している.UC患者の大腸粘膜内にもCD123陽性細胞とCD11c陽性細胞が存在し,間質の炎症細胞浸潤部位を中心に局在していた.今後,大腸粘膜DCのケモカインレセプター発現と機能解析を行う予定である. 以上から,UCにおける大腸粘膜DCの活性化に末梢血DCの遊走亢進が関与している可能性が示唆された.
|