肝再生不全や慢性腸炎などの病態におけるHGFの産生臓器やその制御は十分解明されていない。また、目的とする遺伝子の解析には、その遺伝子のノックアウト(KO)マウスを用いた検討が不可欠であるが、HGF KOマウスは胎児期に死亡することから、成体におけるHGFの役割は十分解明されていない。本研究の目的はHGFプロモーターのトランスジェニック(TG)マウスを用いて組織障害・修復過程におけるHGF産生機構を明らかにし、HGFコンディショナルノックアウト(HGF c-KO)マウスを用いて、組織修復・再生におけるHGFの成体での役割を明らかにすることである。 まず、マウスのGenomic DNAからHGF遺伝子転写調節領域の約2kbをクローニングした。さらに、HGF遺伝子転写調節領域の制御下にレポーター遺伝子を発現させるように調節したプラスミドを作製し、TGマウスを作出した。今後、このマウスに肝炎と腸炎を誘発し、HGF産生機構を明らかにする予定である。また、HGF遺伝子発現のスイッチオンオフ制御を薬剤でコントロールできるように作製したHGF c-KOマウスは2種類のTGマウスを作製することが必要である。まず、マウスHGF cDNAをクローニングし、テトラサイクリン応答因子に制御されるように作製した応答プラスミドを作製して、TGマウスを作出した。また、Tet-Off調節プラスミドを作製し、現在トランスジェニックマウスを作製中である。今後2種のTGマウスを交配して、さらにHGF KOマウスと交配させ、HGF c-KOマウスを作出し、HGFの成体での役割を明らかにする予定である。本研究の遂行により、HGFの成体での分子機構がより解明されれば、組織修復・再生におけるHGFの治療薬としての臨床応用の可能性が真に確立されたものになると考えられる。
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