研究概要 |
ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットにおける検討 我々はグレリンの発見者である国立循環器病センターの寒川らとの共同研究により,確立したRadioimmuno assayによる血中及び眉粘膜中のグレリンの測定、定量的RT-PCRによるプレプログレリンmRNAの測定、免疫組織化学によるグレリン陽性細胞数の検討といった測定系を確立した。まず、1型糖尿病のモデル動物である低体重及び過食を呈するストレプトゾトシン(STZ)誘導糖尿病ラットにおけるグレリン動態を検討した。STZ誘導糖尿病ラットにおいて,血漿グレリン濃度および胃粘膜中のプレプログレリンmRNA発現が増加する一方で,胃粘膜中のグレリン含有量,単位面積あたりのグレリン陽性細胞数が減少するが,インスリン投与により,体重が回復し、これらの変化が正常化することを明らかにした。このSTZラットにおけるグレリン動態から低体重という負のエネルギーバランスが,胃粘膜中からのグレリン分泌及び産生を刺激していると考えられた(Masaoka et al. FEBS Lett 541:64-8, 2003)。 Helicobacter.pylori感染スナネズミにおける検討 次に,Helicobacter.pylori (H.pylori)陽性胃炎の有用なモデル動物であるスナネズミを用いてH.pylori感染のグレリン動態への影響について検討した。H.pylori感染スナネズミにおいて,血漿グレリンが増加する一方で,胃粘膜中のグレリン含有量,単位面積あたりのグレリン陽性細胞数、プレプログレリンmRNA発現が減少した。また、胃粘膜中の好中球浸潤を反映するミエロペルオキシダーゼ活性と血漿グレリン値とが有意に正相関した。このことからH.pylori感染によって血漿中と胃粘膜中のグレリンが変動することが明らかになった(Suzuki, Masaoka et al. Gut 53:187-94, 2004)。
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